世界のチョコレート供給を確保する活動
害虫、疫病そして気候変動の影響で次世代の人たちはチョコレートを楽しむことができなくなってしまう可能性があります。英国の大学の科学者や生物学者たちが現在、カカオ生産の持続可能性を確保するという世界的な課題に率先して取り組んでいます。
今日、害虫と疫病のため世界のカカオ生産可能量の約3分の1が失われており、仮に、気候変動が本格化すれば今後のカカオ供給にさらに重大な影響を及ぼすであろうと専門家は予測しています。
カカオは世界の何十億もの人に、多様なチョコレートやチョコレート製品として食する喜びをもたらしています。それだけでなくチョコレートは、西アフリカの従来のカカオ生産国の経済に欠かせないものであり、またベトナムやタンザニアのように新規にカカオ生産に取り組む国にも輸出による所得をもたらす可能性が十分あります。
南イングランドのレディング大学は、気候変動がカカオ生産に及ぼす影響を評価する新しい5ヵ年プロジェクトに対する資金提供を受け、現在、カカオの生産量を脅かす三大原因の全てを研究することができるユニークな立場にあります。
世界的な気温上昇と大きく変動する降水量がカカオ生産に重大な問題をもたらしています。レディング大学の研究者たちは最先端のカカオの生理学研究用温室を使用し、将来予測される気候により適したカカオの新品種の開発に取り組んでいます。
この温室には、6つの個別に制御できる部屋があり、そのそれぞれで別々に豆の実の生る成木を育てることができます。
それぞれの部屋には補助ライト、移動可能な遮光スクリーンと中央コンピューター制御システムが設置され、それらは特定のカカオ生産地域内の現在および将来予測される代表的な気候をシミュレーションするために使用されます。
カカオは多くの多湿熱帯地方の国々にとっては非常に重要な収入源の一つです。ガーナとコートジボワールを合わせて世界のカカオの約70%を生産しています。
主に小農家が生産に従事しているガーナでは、カカオが国全体の輸出歳入の40%を超え、そして2百万人が直接または間接的にその生産に関わっています。
4名の博士課程研究者と8名の研究生がレディング大学のカカオプロジェクトに取り組んでいます。研究生の多くはカカオ生産国出身の留学生でもあります。
レディング大学生物科学部のポール・ハドレー教授が同研究プロジェクトを指導しています。1977年に海外開発管理研究員としてレディング大学に赴任し、1981年には園芸学講師に任命されました。
同教授の研究は温帯および熱帯気候における作物の生理学に焦点を当て、カカオに関する研究を25年以上続けています。カカオ作物の研究内容としては環境による生育や生産性への影響や、カカオの木の遺伝資源の保存等が挙げられます。
ハドレー教授は「今では、温室効果ガスと森林伐採による将来の気候変動がほとんどの作物に対し気候環境上の問題を及ぼす可能性が高いことは広く意見が一致するところです。特に熱帯作物にとって問題となりそうなのが不均等な降水パターンと最高気温の上昇です」と語っています。
「カカオに対する気候変動の影響についての研究はほとんど皆無に等しく、この新しいプロジェクトはカカオの将来にとって同大学がいかに重要であるかを物語っています。このプロジェクトは将来起こり得る気候変動にうまく対応できる新しいカカオ品種を栽培するために必要な長期的戦略を考案することを目的としています」と付け加えています
カカオの育種素材の国際的流通全般を管理する国際カカオ検疫センター(ICQC)も同大学を本部とし、しかも同センターはこの種のものとしては世界唯一の設備です。350品種以上もの遺伝子上特異なカカオの木を収集し、さらに100品種が検疫中です。
カカオ生殖質の運搬は、品種改良プログラムのための素材提供には必須であることがよくある反面、害虫や疫病の蔓延をもたらすリスクも否めません。
中間地点における検疫がこのリスクを最小限にします。検疫期間は2年であり、この間に樹木に対して害虫、菌類とウィルスによる病気の指標リスト作成が行われます。
ICQCはカカオの木への害虫と疫病の蔓延を防ぐための中心的存在であり、それと同時に世界中の研究センターへ新しい変わったカカオ品種へのアクセスを提供するものです。
カカオの遺伝素材を扱う育種者および研究者は、1998年に始められた同大学の国際カカオ生殖質データベース(ICGD)プロジェクトを通し素材に関する極めて重要な情報を入手することができます。
ICGDには、例えば病気への耐性上の特徴等、2万8千本の木の特徴情報が網羅され、この分野における熱帯樹の作物研究の最先端を行くものと言えます。



































