英国製エンジンパワーで水星探査へ
水星への難しい飛翔探査に英国の最大手科学研究組織が提供する宇宙船の推進システムが採用されます。
キネティック・技術グループは、EADSアストリアム社に対し欧州宇宙機関のベピ・コロンボ探査計画のためのソーラ電気スラスタシステムを提供するという2,300万ポンドの契約を締結しました。
2014年に打ち上げ開始が予定されているベピ・コロンボ計画は欧州初の水星探査計画です。水星は太陽系の最も内側に存在し、その温度は摂氏470度にも及びます。
このミッションは欧州宇宙機関(ESA)に幾つかの難しい技術課題を呈しています。水星では太陽放射線の強度が10倍もあるばかりか、水星到着まで6年を要し、宇宙船が太陽引力に抗して減速するには巨大なエネルギーを必要とするからです。
「水星は最も太陽に近い惑星で、到着することが難しいだけに、先進電気推進システムの採用が技術的課題をクリアする必須条件となります」と語るのはESAの科学・ロボット探査担当ディレクターであるデイビッド・サウスウッド教授。
「しかし、このミッションには非常に重要な目標があります。水星は特異な性質を持っているため惑星科学者を常に悩ませてきました。このため水星探査は科学的に大きな挑戦だと言えるのです」と付け加えました。
キネティック社のソーラ電気推進システムは、4つのT6イオンスラスタで構成されています。このスラスタの採用が決まったのは宇宙船の推進システムに従来から使用されている化学スラスタよりおよそ10倍も効率が良いためです。
電気推進システムに加え、ベピ・コロンボは金星および地球や水星通過時に「スイングバイ」し、惑星間空間の重力場を利用した重力アシストによって幾度かの軌道変更を行います。
アストリアム社の地球観測・ナビゲーション・科学ディレクター、マイク・ヒーリー博士は「ソーラ電気推進システムはベピ・コロンボ探査にとり必須の構成要素です。ベピ・コロンボ宇宙船製作の主契約者であるアストリアム社は、この分野で世界をリードする技術力を理由にキネティック社を選びました。この素晴らしいプログラムで同社と緊密に連携していくことを非常に期待しております」と語っています。
推進剤としてこのスラスタは不活性キセノンガスを使用しますが、現在、地球の重力場観測のため軌道を周回しているESAのGOCE宇宙船で既に実証済みです。
「今年はキネティック社の宇宙チームにとり非常に素晴らしい年となりました。GOCE宇宙船搭載の弊社の小型T5イオンエンジンが周回軌道での初のテスト飛行を達成、そして今回のベピ・コロンボの世界トップクラスのT6エンジンソリューションは、キネティック社最大の宇宙関連事業契約とも言うべきものです」とグループCEOのグラヤム・ラブ氏は語ります。
最後に「電気推進は深宇宙探査を初めて可能とし、将来の通信衛星事業で大幅な効率向上を達成するものです」と締めくくりました。
キネティック社は英国の著名科学者や国際的に有名な専門家を含めて総勢1万名弱のスタッフを擁しています。その多岐にわたる研究開発活動はエネルギー、通信、自動車技術、鉄道技術、電気・電子技術、航空宇宙、健康産業、石油・ガス、情報技術、防衛分野にまで及んでいます。


































